ITの世界では「パソコン」と「PC」という言葉が日常的に使われていますが、これらの違いについて疑問に思ったことはありませんか?
結論からいうと、パソコンとPCは基本的に同じものを指す言葉です。
しかし、使われる文脈によって微妙なニュアンスの違いがあります。この記事では、その違いや歴史的背景も含めて解説します。
「PC」という言葉が特定のタイプのコンピュータを指すようになったきっかけは、1981年に発表された「IBM PC」です。IBM PCはMS-DOS(Microsoftが当時発売していたOS。のちにWindowsに発展)を搭載しており、ビジネス用途を中心に世界中で広く普及しました。
このIBM PCやその後継であるIBM PC ATは、オープンアーキテクチャを採用し、他社から多数の互換機が発売されました。これらの互換機は「IBM PC/AT互換機」と呼ばれ市場に定着しました。
この結果、「PC」という言葉は「IBM PC/AT互換機」の省略形として使われるようになりました。その後、OSがWindowsへと発展していくうちに、Windows系のコンピュータを指す言葉として定着していきました。今日でも「PC」というとWindows搭載マシンを指すのは、この歴史的経緯によるものです。
日本では1970年代後半から1980年代にかけて、個人向けコンピュータが一般に普及し始め、当初は「マイコン」(マイクロコンピュータの略)と呼ばれていました。その後、NEC PC-9800シリーズなどの日本独自のパソコンが人気を博し、「パーソナルコンピュータ」という言葉が普及し、略して「パソコン」と呼ばれるようになりました。
日本市場では長らくNECや富士通などの国産パソコンが主流でしたが、1990年代後半からDOS/Windows系の「IBM PC互換機」(いわゆる「PC」)が普及するにつれ、「PC」という言葉も一般的に使われるようになりました。
一般的に以下のようなニュアンスの違いがあります:
「PC」という言葉は、特にApple社の「Mac」と対比される文脈で頻繁に使われます:
この対比は1980年代から存在していましたが、Appleの有名な広告キャンペーン「I’m a Mac, I’m a PC」(2006年〜2009年)によってさらに強調されました。このキャンペーンは「PCは仕事向きで堅苦しく、Macはクリエイティブで使いやすい」というイメージを広めました。
厳密に言えばMacもパーソナルコンピュータの一種であり、広義の「PC」に含まれますが、一般に「PC」と「Mac」は別物として扱われることが多いです。実際、多くのソフトウェアや周辺機器のパッケージには「PC/Mac対応」というように区別して表記されています。
ですが、実は少し前に販売されていた、IntelのCPUを採用したMacは、基本的にWindowsのPCと同様の構成であり、実際にWindowsを動作させることも可能でした。この辺はちょっとややこしいですね。
現在では、以下のような使い分けが一般的です:
「パソコン」と「PC」は基本的に同じものを指しますが、使われる文脈や時代背景によって微妙なニュアンスの違いがあります。日常会話では区別されずに使われることが多いですが、ビジネスや技術的な文脈では「PC」という表現が好まれる傾向があります。
また、「PC vs Mac」のような対比で使われる場合は、PCがWindows搭載マシンを指すことが多いという点も覚えておくと、コミュニケーションの誤解を避けるのに役立ちます。